・・・・「学校外で学ぶ子の会支援塾全国ネット」というのが正式の名称なのですが、「支援塾ネット」「支援塾」などとよばれているようです。これは、じつはいまから十二年まえ、民間の教育研究会として「わかる子をふやす会」という研究会を組織し、以来、学校の内外で、どうしたら子ども一人ひとりに学ぶ楽しさを味わってもらえるか、ということを研究しつづけてきたことと関連があります。「わかる子をふやす会」をつくった当時は、“落ちこぼれ”という言葉が出はじめたころで、やはり、学校の勉強についていかれない、という子どもが大きくクローズアップされていました。ところが、ここ数年は、落ちこぼれの増加のみならず、いじめ・登校拒否・自殺・が、毎日のようにマスコミに取り上げられるようになってきました。このような深刻な状況がある以上、ぼくたちは、自分たちの私的な研究をしているだけではいけない、という思いになりました。そこで、とりあえず、登校拒否と学力遅れの子どもたちへの援助を、学校のそとの私塾で積極的にしようと、「支援塾ネット」をつくったのでした。・・・(中略)・・・
昨年(1985年)の1月から呼びかけ、現在(昭和61年2月)までに、全国で四百塾が「ネット」に参加してくれましたが、そのことを知った全国の父母や子ども本人からの問い合わせ、相談もあいついで寄せられるようになったのです。昨年の四月からきょうまでのおよそ十か月間に、その数は千五百件にものぼりました。
(中略)いまや学校での勉強や生活に元気を失っている子が全国的に増えつつあります。学校に行ってもたのしくべんきょうできない、とすると、これはもう義務教育といえども、学校ではすべての子には学ぶ楽しさー学習権とでも言うのでしょうかーを保証してもらえない、ということになります。・・・(後略)・・・
「子ども支援塾のすすめ」(八杉晴実著 太郎次郎社1986年発行)より引用
「全国ネット」は読売新聞、毎日新聞、共同通信、NHKをはじめとするメデイアにも再三取り上げられたこともあり、発足後5年間で一定の成果をあげるが、当時次々と起こる若者による悲惨な事件(1989年の幼女連続殺人事件、東工大生の隣人殺人事件など)に接し、おそらく進学塾にも通っていたであろう彼ら「優等生」の中にある「やばさ(冷たさ)」、「もろさ(偏り)」に私塾を営む者として危機感を覚え、結果、「不登校・学力遅れの子を支援する」という鋭角的な対応、看板をはずし、もっと広い角度から子どもの味方をするという方針が打ち出され、同時に、地域でもともと存在していた家庭の文化交流を図るための「家族ネットワーク」が提唱され、それを機会に名称も「子ども支援塾ネット」に改称された。
現在の「支援塾ネット」登録の塾数は112、活動内容は、おもに通信による交流、指導方法や各塾の授業研究などの情報交換、及び年1回の全国合宿、総会。また関西支部では、毎月の定例勉強会、春の合宿が開かれている。
尚、「家族ネットワーク」は発会(1990年5月)に到ったが、同年創設者八杉晴実が病のため他界したこともあり、現在、全国を統括する本部はないが、大阪や東北などで今も活動中の単位ネットワークがある
参考
以下は、「支援塾全国ネット」発会当時(1985年)の入会案内からの抜粋である。
「案内」にある「会員の姿勢」は今なお登録会員の基本姿勢の中に生き続けている。
ネットワークへの入会案内
子どもの味方をし、子どもの幸せを中心に考える全国の良心的な私塾の経営者が参加して、研修・交流し「学校外で学ぶ子の会」の支援をします。
(「学校外で学ぶ子の会」とは不登校・学力不振を皆で考える父母の会です)
[会員の姿勢]
一、競争原理で子どもを追い込まない
二、営利追求を第一目的としない
三、原則的には小規模塾で、子どもの味方をする
[会員の活動]
一、不登校児に家庭的な雰囲気で学べる場を地域の塾で提供する
二、「学力不振児」(学校で落ちこぼされた子)を塾でわかるところから教える
三、ネットワークを作って、私塾の仲間の研修、交流の場とする
四、総会、講演会、研究会はできるだけ参加する